Home / 恋愛 / 強引な後輩は年上彼女を甘やかす / 10_1 初めての旅行 姫乃side

Share

10_1 初めての旅行 姫乃side

last update Huling Na-update: 2025-08-11 04:44:03

というわけで、晴れて恋人の練習から樹くんの彼女に昇格した訳なのですが。

「彼女かぁ」

生まれて初めて彼氏という存在ができたことが嬉しすぎて、気を抜くとすぐに顔がにやけてしまう。

──俺は姫乃さんが好きだから

何度も頭の中で反芻しては緩む頬。

慌てて両手で頬をつねった。

痛い。

やっぱり夢ではないみたい。

練習とか言ってたことが遠い昔のように感じてしまう。

ということは、もう練習じゃなくて本番ってことになるよね。

本番……?

それはそれでどうしたらいいかわからない。

うんうんと悩んだ末でてきた答えは“とりあえずデートかな?”だった。

いつも通りの夕食時、樹くんはいたって普通。私だけがソワソワしている。そんな私を見て樹くんは不思議そうに首を傾げる。

「どうかしました?」

「うん、あの……あの……、デートしない?」

「いいですよ。どこか行きたいとこあります?」

「行きたいところ?」

行きたいところは考えていなかった。

我ながら見切り発車だったなと軽く反省する。

デートといえば樹くん何て言ってたっけ?

私は前に樹くんとした会話を必死に思い出す。

あ、そうだそうだデートと言えばここ。

「えっとー、水族館か遊園地!」

ドヤ顔の私に、樹くんはポカンとした顔をした。

あれ?

何か間違ったかな?
Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App
Locked Chapter

Pinakabagong kabanata

  • 強引な後輩は年上彼女を甘やかす   10_3 初めての旅行 姫乃side

    「ねえ、樹くんは行きたいところないの?」「俺は姫乃さんが喜んでるのを見てるのが好きだからなぁ」「でも私も樹くんに喜んでもらいたいよ」「またそういう可愛いことを言う」私ばかりがいつも喜ばせてもらっている気がして、なんだか気が引けてしまう。私だって樹くんに喜んでもらいたいと思っているのに。樹くんは「そうだなあ」と顎に手を当てて少し考え込むと、人差し指をぴっと立てて言った。「じゃあ大河ドラマ展なんてどう?」「!!!」大河ドラマ展だなんて、なんて素敵な響き。 毎週楽しみに見ている大河ドラマ。その展示物を見に行くなんて夢のようだ。でもそれは完全に私の趣味であって……。 そうこう考えているうちに勝手に顔が緩んでいたらしい。 樹くんはお腹を抱えて笑い出した。「姫乃さんわかりやすっ。よくそれで今まで彼氏がいるって思われてましたね」「むー」「はいはい、ごめんごめん」樹くんは笑いながらも両手を挙げてお手上げのポーズをした。「でも大河ドラマ展なんて、遠いじゃない。この辺じゃないよね?」「旅行ってことで」「旅行?!」彼氏と旅行とか、夢のようだ。 え、本当に? 夢? 現実?あれこれと考えていた私は、どうやら百面相になっていたらしい。 そんな私を見て樹くんはまたお腹を抱えて笑った。

  • 強引な後輩は年上彼女を甘やかす   10_2 初めての旅行 姫乃side

    「……姫乃さんって真面目すぎない?」「え?」言っている意味がわからなくて逆にポカンとしてしまう。すると樹くんはクスリと笑う。「無理してデートっぽくしなくていいんですよ。本当に行きたいところはどこ?」「いやいや、水族館も遊園地も行きたいよ」「当ててあげます。そうだな、博物館の鎧兜特別展か、美術館のミュシャの世界展あたりかな?」「うっ」樹くんは的確なところを突いてくる。 博物館も美術館も大好きだし、その特別展は電車の中吊り広告で見て行きたいと思っていたところだ。「どう?」「……それも行きたいです」得意気な顔の樹くんに、私は白旗を振った。 私のことはお見通しといった感じが何だか悔しい。だからか、無意識に膨れっ面になっていた私の頭を樹くんは軽くポンポンと撫でた。「俺は素のままの姫乃さんが好きなんだから、恋人になったからって一般的な模範解答しなくていいです」「……はい、すみません」上手くやり込められてますますしゅんとなる。 樹くんは年下のくせにしっかりしている。 いや、わたしがぼんやりしすぎているのかな。 ちらりと樹くんを覗き見ると、いつも通り涼しい顔をしていた。そして私と目が合うと甘く笑う。「まあでも、その努力家なところも好きですけどね」ストレートな言葉に一気に顔が赤くなった。 ああ、本当に、このドキドキは心臓に悪い。

  • 強引な後輩は年上彼女を甘やかす   10_1 初めての旅行 姫乃side

    というわけで、晴れて恋人の練習から樹くんの彼女に昇格した訳なのですが。「彼女かぁ」生まれて初めて彼氏という存在ができたことが嬉しすぎて、気を抜くとすぐに顔がにやけてしまう。──俺は姫乃さんが好きだから何度も頭の中で反芻しては緩む頬。 慌てて両手で頬をつねった。痛い。 やっぱり夢ではないみたい。 練習とか言ってたことが遠い昔のように感じてしまう。ということは、もう練習じゃなくて本番ってことになるよね。 本番……? それはそれでどうしたらいいかわからない。 うんうんと悩んだ末でてきた答えは“とりあえずデートかな?”だった。いつも通りの夕食時、樹くんはいたって普通。私だけがソワソワしている。そんな私を見て樹くんは不思議そうに首を傾げる。「どうかしました?」「うん、あの……あの……、デートしない?」「いいですよ。どこか行きたいとこあります?」「行きたいところ?」行きたいところは考えていなかった。 我ながら見切り発車だったなと軽く反省する。デートといえば樹くん何て言ってたっけ? 私は前に樹くんとした会話を必死に思い出す。 あ、そうだそうだデートと言えばここ。「えっとー、水族館か遊園地!」ドヤ顔の私に、樹くんはポカンとした顔をした。 あれ? 何か間違ったかな?

  • 強引な後輩は年上彼女を甘やかす   09_9 異論は認めない 姫乃side

    そんな。 彼氏がいると思われていた方が安全だなんて、じゃあ私は一生彼氏がいると嘘をつき続けなければいけなくなる。「どうしよう樹くん」思わず袖をつかむと、樹くんは困った顔をした。「そういう可愛い顔して煽ってくるのやめてください」「困ってるの」樹くんは私から視線を外すと、ボソリと呟いた。「こっちが困るっての」「……そうだよね、ごめんね」私はガックリと肩を落とす。 だいたい私は樹くんに頼りすぎなのだ。もっとしっかりしないといけないと思う。思うけれど、ダメ人間な私は解決策がまったく見出だせない。この先どうしたらいいのだろう。「俺が彼氏でいいじゃん」樹くんの発言に私は顔を上げる。「え?」「俺が姫乃さんの彼氏。はい、もう決まり。異論は認めません」「で、でも?」「何? 異論は認めないって言ってるでしょ」樹くんは腕組みをして深いため息をついた。「樹くん迷惑じゃない?」「迷惑じゃない」「だって私年上だし」「関係ない」「鈍感で天然で箱入り、だし」「可愛いんじゃない?」「でも……」「うるさい、もうその口黙らせる」樹くんは不機嫌な顔をしつつ、私をソファに押し倒して唇を塞いだ。息ができないくらいに深く激しい強引なキスに、じわっと涙が浮かぶ。怒られているのか甘やかされているのかわからないこの状態に、頭はまったくついていかない。ようやく唇が解放されると、樹くんは私を見下ろしながら小さく言う。「俺は姫乃さんが好きだから。それだけ」「……うん」とたんに胸がきゅーんと締め付けられ、ただ返事をするので精一杯だった。

  • 強引な後輩は年上彼女を甘やかす   09_8 異論は認めない 姫乃side

    私はただ今、樹くんの家で絶賛正座中だ。というのも、樹くんがめちゃくちゃ怒っているからで……。原因はもちろん先程の早田課長とのことなんだけど。「はぁ……」大きなため息に、私は身を小さくする。「……ごめんなさい」もうそれしか言葉が出ない。樹くんは冷たく私を睨む。「姫乃さんさぁ、もうちょっと危機感持ってって言ったよね?」「はい」「俺が見つけなかったら、どうなってたかわかる?」早田課長にずるずるとラブホテルに連れ込まれて、でも早田課長は休憩するだけだからって言っていたけど。「……どうなってたんだろう?」「早田課長にやられるとこだったんだけど。今まで何人早田課長に騙されたか知らないの?」「やられるって……?」「はぁ……」ひときわ大きなため息に、私はこの場から逃げ出したくなった。ダラダラと背中に冷たい汗が流れる。「早田課長に抱かれるとこだったんだけど!」「抱かれ……えっ!」まさか、そんな。あらぬ想像してみるみる顔に熱が集まるのがわかった。「だって早田課長、休憩したいって」「この鈍感! 天然! 箱入り!」「うっ。そんな言わなくても……」強い口調に、じわっと涙が浮かんだ。確かに危機感なくて鈍感だけど、はっきり言われるとやはり傷付く。「それとも抱かれたかったわけ?」私は慌てて首を振る。まさか抱かれたいだなんて、思うわけがない。「はあ、今まで無傷だったのが奇跡だよね」「無傷?」「彼氏がいるって思われてた方が安全だったってこと」首をかしげる私に、樹くんはビシッと指を立てて言った。

  • 強引な後輩は年上彼女を甘やかす   09_7 異論は認めない 姫乃side

    自動ドアが開くと奥は少し薄暗くなっていて、その雰囲気が余計に私の体を強張らせた。嫌だ。 行きたくない。 助けて。 誰か助けて。ぎゅっと目を閉じると同時に突然手を後ろに引かれ、その勢いに任せてよろけてしまった。何事かと驚くままに、誰かに抱き止められる。それが早田課長ではないことだけはわかった。「姫乃さん何してるの」その声はよく知っている声で。 そんな聞き慣れた声に安心感を覚える。「樹く――」「何をしているんだ、大野」早田課長が叱責する声が背中越しに聞こえる。 樹くんは私を胸に抱えたまま、冷ややかな表情で早田課長を見ていた。「それはこっちのセリフですよ、早田課長。姫乃さんをどうするつもりだったんです?」「どうするもなにも、彼女の方から休憩したいというから、俺は着いてきてあげただけだよ。人聞きの悪いことを言わないでくれ」「ち、ちがっ」 「帰りますよ」否定する言葉は、樹くんによって遮られた。 全てを無視して、私の手を引いてさっさと歩き出す。「あ、そうそう。証拠写真は撮りましたので、部長に報告しておきますね」樹くんは振り向き様にそう言うと、早田課長に対して冷たく笑う。「大野、そんなことしていいと思っているのか」「何がです? 早田課長は既婚者。俺と姫乃さんは独身。何か問題ありますか?」樹くんの言葉に、早田課長は苦虫を噛み潰したような顔になった。 そして私は樹くんに強引に引きずられながらその場を去った。

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status